あくあまりん。
突然の出会い。
《杏樹side》





チチチチチ…………

鳥が外で鳴いている。

今日はとても良い天気。


女子高生ならこういう時は………
普通、友達と遊んだりするんだろうな………。



でも、あたしには……それができない。

ここの……この病院の敷地内から出ることはできない。



あたしは、長峰 杏樹(ナガミネ アンジュ)。

本来なら、れっきとした女子高生16歳。

あたしは……高校に通うことは、できない。


この重い心臓病のせいで………。

いつまで生きれるかも分からない。



何故、よくニュースで見る自殺したい人のところにこの病気がいかないの。

何故、あたしのような生きたい人のところへ病気がくるの。


もうこんな生活………嫌だ。





ガララッ

突然病室のドアが空いた。

そこには見知った顔が1つ。



「よーーっす、杏樹!

元気か?!」


「あ、卓海!!」


そこには、あたしの幼なじみで唯一の友達の
矢沢 卓海(ヤザワ タクミ)がいた。


「お、今日はまだ元気そーだなっっ♪

良かった良かった♪」


彼はほぼ毎日あたしに会いに来てくれる。

それが数少ないあたしの支え。


「ありがとね、卓海。」


「いーんだよ。

俺が杏樹のこと心配で

勝手に来てんだから。」


卓海……ホント、小さい頃からずっと優しい…。


「あ、わりぃ杏樹。

もう遅刻してしまいそう。

行ってくるなっ♪」


「うん、行ってらっしゃい。

気をつけてね?」


「おぅ!!」


そして、卓海は病室を後にし、自分の通う学校へ向かった。




……さて、と。

卓海も学校行っちゃったし、いつものお気に入りの屋上にでも行きますか♪


車椅子でしか移動する手段がないから、あとはエレベーターを使って屋上へ向かう。


チーン……

屋上へエレベーターが着いた。

慣れた手つきで車椅子をあやつり屋上へ出ると、いつもの景色とはあまりにもちがう、1番見たくないものを見てしまった。


それは………










自殺しようと、手すりを越えている人。





よくよく見れば、男の人で同い年くらいだった。


あたしは自分の心臓病のこともあり、自殺しようとする人は許せない。

気付いたら、迷わず声をかけていた。


「……あなた、何してるの。」


あたしの声に一瞬ビクッと体が跳ねたけど、意外と冷静にこちらへ振り返ってきた。


「………アンタ、誰?

テメェにカンケーねーだろ。」


「………自殺、するの?」


「…あぁ、そうだ。

つーわけで、部外者は引っ込んでろ。」


「アンタ、命を何だと思ってるの。

ここには……あたしみたいに

死にたくないのに重い病気を持つ

人がいて、いつ死ぬかも分からない。

アンタ、病気じゃないんでしょう?

病気もなく、生きてるだけいいと

思ってみれば。」

「………あっそ。

気分害した。

めんどくせぇが、自殺はやめてやる。」


「……そ。

なら、とっととこの病院から出てって。

………命を大切にしない人なんか、

大っ嫌い。」


「ヘェ、そいつは好都合だ。

オレも2度とテメェなんか

見たくもねーよ。」


そう吐くと、その男はエレベーターに乗り去っていった。

あたしはざまあみろと思った。







だけど。



……あたしは……あたしたちは、知らなかった。














これが、生涯忘れることのない、

大切な思い出となる

出会いだったということを…………。


< 1 / 9 >

この作品をシェア

pagetop