甘い恋の始め方
今年は結婚ラッシュで、独身の友人たちはこぞってお嫁に行った。

理子は……といえば、別れてからこの2年間恋人はおらず、30歳を目の前にしてこのまま結婚できないのかと焦り、先日婚活パーティーを申し込んだ。

本当にそこで結婚相手が見つかるのか……期待は半分半分で、まずは行ってみなければわからない。今日の婚活パーティーはハイステータスの男性ばかりが集まる。

恋に夢見る年頃ではない。結婚はやっぱりお金でしょう。と思う現実主義の理子だ。

だから花より団子、団子よりお金。年収1000万円以上のハイステータスな夫を求める。
そんな高収入の男性は身近におらず、こういうパーティーにでも参加しなければ出会えない。

「もう少し頬紅を入れたら? ピンク系がいいわよ」

「あ、そう思う? でも、オレンジ系しか持っていないの」

「私、持っているわよ」

加奈は自分のデスクに行くと、手に化粧ポーチを持って戻ってきた。

ふたりが勤めているIT企業。彼女たちはWEBデザイナーで、責任ある仕事をすれば割と就業時間中もこんな会話をしても誰にも咎められない。

フレックスタイム制を導入しており、自由な社則があった。

「はい」

渡されたのはピンク色系のグラデーションが入ったチーク。

「ありがとう」

受け取った理子はさっそく頬骨の上にチークを入れる。

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