甘い恋の始め方

マリッジブルー?

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悠也は康子の自宅へひとりで向かっていた。

白金台の自宅へ着くと、理子を心待ちにしていたようで一緒じゃないのを知ると康子はがっかりしたようだ。

「お仕事が忙しいのなら仕方ないわね。このデザインで良いか確認してもらって、すぐに準備に取り掛かりたかったのだけど」

「康子さんのデザインなら彼女から文句は出ませんよ」

「あら、そんなことないわ。一生に一度のことなんだからウエディングドレスだって自分でちゃんと確認したいと思うのよ。あ! コーヒーが良い? ハワイのお土産に新鮮なコナコーヒーをいただいたから今淹れるわね」

悠也が自分で淹れると言うのを遮って、康子はキッチンへ行ってしまった。

悠也はリビングのソファに腰を下ろし足を組むと、ローテーブルの上にある1冊の本に目がいった。

それは癌についての本だった。ひとりで苦しみに耐えていると思うと、胸が痛む。

そのせいで、その本を手に取る気も起こらない。

「おまたせ。良い香りでしょう?」

康子はウェッジウッドのコーヒーカップを二つ、トレーに乗せて戻ってきた。

「ああ。良い香りですね」

悠也は早速コーヒーを口にした。

康子はまだ飲まずに悠也が飲むのを見ている。



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