甘い恋の始め方
(選んでもらえるとは思っていなかったけど……)

理子は悠也に選ばれなかった。

婚活パーティーはお開きになり、参加者が出口に向かっていく。

自然と視線が悠也を探してしまう。

彼は退室しようとしていたが、参加者の女性から話しかけられ足を止めた。

悠也に話しかける一生懸命な彼女たちを眺めていると、理子は背後から名前を呼ばれた。

「理子さん」

「はい?」

食事のとき、斜め前に座っていた男性だった。

会話の中で彼は歯科医だと言っていたのを思い出した。

「カップル成立にならずに残念でしたよ」

「え……?」

「僕は貴方の名前を書いたんです」

「ぁ……」

「とても歯がきれいですね。あなたみたいな人とならもっと話をしてみたいと思ったんです」

彼は照れ臭そうに頭の後ろを手で掻いた。

(さすが歯科医。見るところが「歯」だなんて)

「すみません……私、誰のお名前も書かなかったんです」

と言うのは嘘。

理子が書いたのは悠也の名前だった。



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