甘い恋の始め方
浩太の軽いジョークを交えての会話につい乗せられてしまう。

自分を好きだと言う浩太。

それを100%信じる年ではない。

ばったり会って、そんなことを言われても信憑性にかける。

浩太と会うことで悠也に罪悪感を覚えるが、理子には何の恋心もない。

(食事をするだけ)

悠也に対する罪悪感を振り払い、理子は仕事を始めた。

「おはようございまーす!」

加奈が部屋に入ってきて、まっすぐ理子の元へやってくるとパサリと小冊子をキーボードの上に置いた。

「なにこれ?」

わが社の新入社員用の小冊子だ。

「副社長のことが載っているのを思い出して、昨日クローゼットの中を探しちゃったわ」

作業の手を止めた理子は小冊子をめくる。

悠也の写真はなかったが、経歴が書かれてある。

それは悠也に憧れていた理子にはすべてわかっている情報だった。

(東京大学を卒業後、ハーバード大で経営学か……)

今更ながらすごい人なのだと認識すると、ますます自分と会うつもりの悠也がわからなくなる理子だ。

「ありがとう」

理子は目の前のデスクに座った加奈に礼を言うと、机の引き出しに小冊子をしまう。

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