甘い恋の始め方
「なんだって? すごく嬉しそうな顔していたけど?」

電話を切るなりさっそく加奈が楽しそうに満面に笑みを浮かべている。

「週末に一度戻って来るって……」

「本当!? 副社長、理子のことが気になるのね!」

「電話が繋がらないから心配してくれていたみたい。なんだかくすぐったいね」

以前の男たちはそんなこと言ってくれなかった気がする……ううん、違うか。

電話がかかってくればすぐに出ていたからそんなこと一言も言われなかったのね。

過去の恋愛を思い出し、理子の口からため息が漏れる。

「なあに? どうしたの? たった今、幸せな話をしていたのに」

「以前の恋愛を思い出したらなんか情けなくなったの。どれだけ自分が受け身だったかって。翔の浮気、私にも理由があったのかもしれないね」

「過ぎ去った男のことなんか思い出さないの! さあ、飲んで! これから幸せが待っているんだから」

加奈はチャミスルを注ぎ、理子に飲むように促す。

「本当に幸せが待っているのかな……」

理子はチャミスルを飲むと、ポツリ言った。

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