にっこりと笑って、大田原さんが謝罪と感謝を混ぜた別れの言葉を口にする。

真鍋さんは唇を噛みしめると、こちらに向かって突進してきた。

腹いせのように私にぶつかり、その勢いのまま立ち止まることなく、階段を駆け降りていった。

私はその体当たりを堪えきる事が出来ず、床にお尻を打ち付けてしまった。


「いたたたた」


痛みを堪えながら、即座に彼女を可愛そうだと思った事を後悔する。


「木村さん、すみません。つい巻き込んでしまいました。大丈夫ですか?」


大田原さんが手を差し伸べてくれた。

こんな状態であるにも関わらず、その綺麗な手に触れることに、気恥ずかしさが込み上げて来る。

私は懸命に平然を装いながら、彼の手に自分の手を重ね置いた。

立ち上がりスカートを払うと、大田原さんが憂鬱さを知らせるため息を吐いた。


「やっぱり、社の女の子で試すのは止めた方が良かったでしょうか」


顎に手を添え、ぼんやりと考え込んでいる。


大田原さんって、こんな感じだっただろうか。


そんな疑問が頭を過ぎった。

一応確認しておこう。


「あの……大田原さんですよね?」

「はい。大田原です」


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