「・・・わかったよ・・・ただし1週間だけよ」
なーんて言った先から後悔だよ。
どうしてOKしちゃったんだろう。
店に戻ってもその事がぐるぐると回って仕事にならない。
これが花嫁役ではなく花嫁なら私はきっと
腹踊りしちゃうくらい喜んでんだろうね。

私は陸が好きだ。
でも気付くのが遅すぎた。
ま~~早くても両想いになったかは正直わからないけどね。
自分の気持ちに気付いたのは
皮肉なもので、陸から届いた披露宴の招待状を受け取った時
だったんだもん。

陸とは高校の時に知り合った。
話をするきっかけになったのは
たまたまお互い別の友達に貸したCDが
同じバンドの物だった。



「え?もしかしてそれってflyby?」
陸が持っているCDを見て思わず叫んでしまった。
それもそのはず、持っていたCDはデビューして半年の
新人バンドのCDで、正直まだヒット曲らしいものも
ないバンドだった。
そんな無名に近いバンドのCDを同じクラスの男子が
持っているなんて思ってもいなかったからだ。
だから思わず叫んだのはうれしさからくるものだった。
「え?お前もこのバンド知ってんの?」
「知ってるも何も、デビュー曲のenvelope(エンベロープ)聞いて
鳥肌立っちゃったもん」
陸も目を輝かせ
「俺も!初めてラジオで聞いた時の衝撃は堪らなかった。特にさ
ヴォーカルの声がいいんだよ。」
「そうそう!ヴォーカル、確か大野達央(おおのたつひさ)っていうの!」
こんなにも興奮したのは高校入学以来初めてだった。

それがきっかけで高校入学して初めて男友達と呼べる人が出来た。

2年になるとクラスは変わってしまったが、廊下ですれ違ったりすると
挨拶したりflybyが新曲を出せばどちらかが声をかけ
話が盛り上がった。
そんなある日突然、バンドやらないかと誘われた。
正直楽器経験など全くなかった。
もちろん陸もその一人だった。
あまりの熱意に根負けした私はベースを選んだ。
理由は弦が4本だからという理由だ。
ギターなんか弦が6本だよ。
自分の指の数以上の物は無理無理と、とにかくベースを希望した。
メンバーは4人。ギターとヴォーカルは陸、私がベース。
そしてもう一人ギターは弦のクラスメイトで最近flybyのファンに
なったという松田君。ドラムも陸のクラスメイトで藤堂君。
この4人でflybyのコピーバンドを結成した。
バンド名はenvelope。(flybyのデビュー曲からもらった)

このバンド、名前だけはかっこいいが
結成当初は酷いものだった。
譜面は読めない。コードもいまいち押さえられない。
楽器弾きながら歌を歌うなんてハイレベルな事なんてとんでもない。
それなのに目標だけは高く・・・文化祭。

その文化祭は・・・というと
実力と反比例するかのように物凄く注目を浴びた。
・・といっても浴びていたのは陸だけだったけどね・・・
陸は学年でも割と目立っていた。
ルックスがね・・・・
背も高く、顔の輪郭は綺麗な逆三角形。
目は目力があるいうか・・・見つめられるとこっちが恥ずかしくなってしまうような
そんな魅力があった。
鼻筋も通っていて唇は薄くて・・・なんかエロかった。
そんな陸を女の子がほっとくわけなかった。
もちろん陸は来るもの拒まず
なんでもいいよ~~なんて感じだったから
私は正直異性としての陸は好きになれなかった。
友達としてはよかったけどね。
おかげで
陸の恋愛処理班の様になにかとごたごたに付き合わされた。

だけどそれは私に彼氏が出来るまでの事だった。

私に彼氏が出来たと知ると
なぜか陸は私に何も頼みごとをしなくなった。

だから私も陸には自分の事を話すことはなくなった。