午後9時。

病棟の忙しさの波が、どうにか静まった頃。急患が来ていると外来に呼び出された佑一郎は患者の姿をみて目を丸くした。

「美緒、どうした」

驚く佑一郎に美緒は、問診票を突きつけた。

「今晩は、先生。私患者です。だからちゃんと診察をしてくださいね」
「え、ああ」

佑一郎は美緒の気迫に押されて、何も言わずに問診表に目を通す。

「有坂美緒さん、27歳」
「はい」
「既婚で、大きな病気もしたことがない……と、え――」
「どんな病気でしょうか?先生」
「尿検査を、いや、そんなの待てない。内診台に上がってエコーを」

寄ってきた研修医を追い出して、佑一郎はいつも患者にしているように、美緒の内診を始める。