戦と死の神の忘れ形見
第一章 ~雨の都~


 ――何とか撒いたか……。

 我はゆっくりと溜息をつく。
 あやつときたら我の監視の他にもやることがあるであろうに。

 あやつは我がここに来るのを快く思ってはおらぬ。
 恐らくであるが、後できつく叱られるであろう。

 ――だが。見ておきたかった。

 自分で見届けたいからこそ、我はあやつにも父上にも何も訊かずにおったのだ。

 さて、我の眼下には溶岩に包まれた世界がある。

 人の子の時間では長い間続いた結界期の終わりにある世界が。

 その世界を見届けるべく、我はそこに意識を移した。


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