空も飛べるはず【短】
空も飛べるはず


大きな貸出カウンターの中で、きみは広い背を猫のように丸めてゲームをしていた。


うちの学校はスマホ禁止です!

……なんて言えるわけもなく、あたしは見て見ぬふりをして、カウンターの端で文庫本を広げていた。




土曜日の授業のあと、図書委員のあたしは、図書館にいる。


仕事は特にない。

たまに来る生徒の本の貸出と、返却業務だけ。

司書の先生は閉架書庫にこもって、本を読みふけっている。


委員会の仕事は毎週あるわけじゃない。
ローテーションでたまーに回ってくる。


あたしは本が好きだから、本に囲まれてるこの時間が好き。

だけど、きみは違うみたい。


「ふわぁ~あ」


大きなあくびをしたきみは、スマホをカウンターの上に置き、首をこきこきと鳴らす。


そしてぼんやり宙を見つめたあと、またスマホを手にとった。


きみは、同じクラスの江藤くん。

バスケ部員のきみは背が180cmと高くて、目は二重でかわいいのに、つりあがった眉と短い茶髪の効果できりっとして見える。


クラスではよくしゃべっていて、男女問わず人気があって、地味でチビで目立たないあたしとは、正反対。


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