高梨さんの日常

愛情って?






静かな部屋にシャカシャカと混ぜる音が響く。

明日はバレンタイン前日。

北条のお姉さんと放課後にお菓子を作る約束をした。

それが本番。

その前にせめて綺麗なものを作れるようにとここ数日学校から帰ってから練習をしている。

一人で味見をしてみてもなんだかしっくりこない。

まずいわけじゃない。でもなぜだか美味しくならない。

足りないものは、なに?


「なにしてんの」

甘い香りが漂うキッチンにリンがやってきた。

冷蔵庫から缶ジュースを取りにきたみたいだ。

「バレンタインの練習」

「へえ」

最近は話すことなんてほとんどなくて、会話はすぐに途切れる。

「……ランは、…楽しい?」

リンは私に背中を向けたままそう聞いた。

ラン、なんて呼ばれたのはいつぶりだろう。

「楽しいよ」

そう答えるけど、それを最後まで聞くより先にリンはキッチンから出て行った。

出来上がったものをまた、一口食べてみる。


なんだか味気ない。

いつも一人で食べるご飯と同じ味。

「はぁーー…」

不甲斐なさにため息が漏れた。

「こんなんで大丈夫なのかな…」


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