私はまだ、ガラスの靴を履く勇気がない。
夢の国の住人。
「白雪姫です。よろしくお願いします…」
拍手。
よろしくと言うたくさんの声。
私の夢の中そっくりだった。
―――「白雪さん!」
「…?」
私が首を傾げると、横に立っている子は笑って言った。
「さすがに自己紹介だけじゃ覚えられないか。『華崎 夢野』(はなざき ゆめの)。よろしくね」
「あ。よろしくお願いします」
「白雪さんてさぁ」
「……?はい」
「ちょー可愛いよねっ」
「はいっ?」
「髪さらさら―!」
「あ、あの…華崎さんの方がはるかに可愛いかと…」
「そう?」
「はい」
何度も大きく頷いた。
華崎さんは、しばらく黙って私の髪を触った後、にこっと笑って言った。
「お世辞ありがとっ」
い―や!
いやいやいやいや…
なんで伝わらない?
私は、黙って華崎さんを見た。