たとえ、これが恋だとしても~あなたとSweet sweets~
狂気のサロメが牙をむく
「今日もダメだったか……」



受話器を置きながらそう呟く惟の声は、どこか力がない。だが、それも仕方がないと言えるだろう。なにしろ、先日以来、亜紀と会うことができなくなってしまっているからだ。

あの時、『亜紀が落ちついたら連絡を欲しい』と告げ、雅弥はそれを承諾したはず。それなのに、あの日から一週間は経っているというのに、いまだに連絡がない。

思春期の女の子の精神状態が不安定になりやすいことは、惟もよく知っている。だからこそ焦ってはいけないということは分かっている。

それでも、毎日のように会っていた亜紀の姿を見ることができない。身近に彼女の気配を感じることができない。そのことがかなりのストレスになっているのは間違いない。

そのために惟は連絡がくるのを待ち切れずに自分から連絡を取ろうとする。しかし、亜紀の携帯に何度ダイヤルしても、彼女が応えることがない。思い余って一條家に連絡を取っても、雅弥が取りつく島もなしに断りの文句を告げる。

そんなことを何度繰り返しただろう。そのことに大きくため息をついた惟は、また電話を手にしている。しかし、今度は一條家に連絡をいれるのではない。ここならば亜紀の様子を知ることができる。そのことを確信している番号に繋ごうとしているのだった。



「亜紀、どうして会ってくれないの? 何か僕のことで不満でもあるの? だから会ってくれないの? でも、それならちゃんと君の口から教えて。亜紀、今、何を考えてるの?」



デスクに飾ってある写真は、彼が誰よりも恋しいと思っている少女。婚約が成立してすぐに撮ったその写真の中で、彼女は幸せそうな笑顔を彼に向けている。
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