オフィスの甘い獣(ケダモノ)

和side~

「今日はこのまま…直帰する…お疲れ…お前も早く帰れよ…立脇」



俺はオフィスに残っていた部下の立脇に電話。


今夜…オフィスには戻らず…そのまま…マンションに帰ろうと夜の街を歩いていた。



秋も深まり…少しずつであるが…頬を掠める外気も冷たく感じる。



「!?」


真っ直ぐな舗道。
行き交う人の波に紛れながら歩いていた。



髪の長い女性はしゃがみ込んで舗道の石畳みに目を凝らしていた。


誰も彼女には手を差し伸べず…急ぎ足で避けて通り過ぎていく。
いつからこの国は冷たい国になった?
必死に何かを探す彼女に声を掛けた。

「君…どうしたの?」



「!?」



彼女が顔を上げて俺をジッと見つめる。


亜麻色の柔らかそうな髪の毛。

泣き出しそうな二つの瞳に困ったへの字眉。

綺麗に整った小顔。



「あれ!?神宮寺副社長?」










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