この音を聞いたのは、いつぶりだろう

ドクン、ドクンと脈を打つ心地よい音

触れる指と笑う顔を思い出す度熱くてうるさくて





『やっぱりお前とは、結婚できない』





その瞬間

遮るあの声が、私を現実に引き戻す。





『知香、これ』

『…?なに?』

『開けてみて』

『指、輪…?』

『うん。…結婚しよう』

『……』





そうプロポーズをされたのは、何の記念日でもないいたって普通の日の夜。

いつも通り過ごしていた彼の部屋で、ダイヤの指輪を薬指にはめてくれた。





『…サイズ、大きいんだけど』

『え!?』

『ほら、ユルユル』

『あ〜…本当だ、びっくりさせようと思ってサイズ聞かないでいたのがやっぱり悪かったか…』

『もう…じゃあ今度サイズ直しに行こう?』

『へ?それって…』

『有難く、指輪受け取らせてもらいます』

『…!知香ー!!』





キスをして愛を誓ったその次の日、二人でジュエリーショップに行ってサイズを直してもらい、一ヶ月後にはピッタリの指輪が私の薬指にははめられていた。



あの頃より少し痩せた指。今ではきっとまた、指輪は緩くなっているだろう。

…確かめようにも、試しにはめる気持ちにはなれないけれど。





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