少女達は夢に見た。
第1章 親友が好きな人
「好きです!」
放課後の教室。
オレンジの夕焼け。
染まる少女二人。
片方は、ミディアムの染めているわけではないが明るい髪をちょこんと二つに結んでいてる。
身長150㎝ほどの、小柄で細身な少女。
更に言えば童顔で、恋する乙女の薄ピンクと、幸せカラーの黄色のオーラをまっとっている。
波多瀬柚奈(はたせゆな)は顔を伏せ、5メートルくらいさきまでは余裕で聞き取れそうな音量で、元気な告白をした。
相手は、机によっかかっている。
柚奈よりも15㎝ほど背の高い彼女は、長く真っ黒の、艶のある、平安美人を思い起こさせるような髪を高く1つにく繰り上げている。
長い睫毛が印象的だ。
目を伏せて、目に掛かった髪をかきあげる。
そのしぐさはどこか儚い。
彼女…溝口一瑠(みぞぐちいちる)は現在中学2年生だ。
もちろん柚奈も同じに。
さらに言えば、2人は2年1組で勉学を共にする…つまりはクラスメートである。
「…で?」
一瑠は少しばかり不機嫌そうに眉をひそめ、声を発した。
自分に告白した相手に対する言葉とは思えないほど冷たい。
柚奈は、きょとんとして聞き返す。
「で…って?」
「好きです、はい、わかりました。…で?」
「え?」
「柚奈はどうしたいの?」
机に持たれているせいで、体重のかかった腕が辛かったのか、気だるそうに寄りかかり直してから、責めるような口調で、そう問いただした。
「付き合いたいの?」
「え?」
あまりにストレートすぎる質問に、しばらくの間黙ってしまう少女。
「付き合いたい…のかな?」
自信がないのか、疑問系になる。
「そこまで望んでない?」
一瑠は、そんなことお構いなしに続ける。
「そんなことないけど…。」
「そんなことないんだ。」
少し、面白そうに笑った少女の顔。
相手の言いにくい言葉を復唱することで、さらに羞恥を煽っている。
そのことに柚奈は気付いたのか、合っていた目をフッとそらした。
それをみて、一瑠はさらに面白そうな顔をする。
「だって…。」
柚奈は力のこもりきらない声で、独り言のようにそう漏らした。
しかしそれは、はっきりとした意思を持って、一瑠に向けられた言葉だった。
一瑠は返事のかわりに真っ直ぐ合わない目を見つめる。
こういうとき、下手に反応をしっかりすると、相手は言いにくくなってしまうことを、彼女は心得ているのだ。
そうして、一言も聞き漏らさないよう、柚奈の言葉に耳を傾ける。
短い沈黙が流れた。
「好きです!
…ごめんなさい。
なら、まだ傷は浅くてすむけど、
好きです!付き合ってください!!
…ごめんなさい。
は、相当なダメージくらうよ?」
いきなり1人芝居を始めた柚奈を哀れむように見つめる一瑠。
無駄に声がでかいのは恥ずかしさを紛らわすための勢いづけなのか。
隣のクラスに人はいなかったかと心配する。
もしいたら聞こえていたかもしれない。
そう。
先程の柚奈の告白は、一瑠に向けた愛のあるものではなく、告白の練習として向けられた言葉だったのだ。
ゆえに、声に力がこもっていたのだ。
きっと、本番では、こうは声が出てはこないであろう。
放課後の教室。
オレンジの夕焼け。
染まる少女二人。
片方は、ミディアムの染めているわけではないが明るい髪をちょこんと二つに結んでいてる。
身長150㎝ほどの、小柄で細身な少女。
更に言えば童顔で、恋する乙女の薄ピンクと、幸せカラーの黄色のオーラをまっとっている。
波多瀬柚奈(はたせゆな)は顔を伏せ、5メートルくらいさきまでは余裕で聞き取れそうな音量で、元気な告白をした。
相手は、机によっかかっている。
柚奈よりも15㎝ほど背の高い彼女は、長く真っ黒の、艶のある、平安美人を思い起こさせるような髪を高く1つにく繰り上げている。
長い睫毛が印象的だ。
目を伏せて、目に掛かった髪をかきあげる。
そのしぐさはどこか儚い。
彼女…溝口一瑠(みぞぐちいちる)は現在中学2年生だ。
もちろん柚奈も同じに。
さらに言えば、2人は2年1組で勉学を共にする…つまりはクラスメートである。
「…で?」
一瑠は少しばかり不機嫌そうに眉をひそめ、声を発した。
自分に告白した相手に対する言葉とは思えないほど冷たい。
柚奈は、きょとんとして聞き返す。
「で…って?」
「好きです、はい、わかりました。…で?」
「え?」
「柚奈はどうしたいの?」
机に持たれているせいで、体重のかかった腕が辛かったのか、気だるそうに寄りかかり直してから、責めるような口調で、そう問いただした。
「付き合いたいの?」
「え?」
あまりにストレートすぎる質問に、しばらくの間黙ってしまう少女。
「付き合いたい…のかな?」
自信がないのか、疑問系になる。
「そこまで望んでない?」
一瑠は、そんなことお構いなしに続ける。
「そんなことないけど…。」
「そんなことないんだ。」
少し、面白そうに笑った少女の顔。
相手の言いにくい言葉を復唱することで、さらに羞恥を煽っている。
そのことに柚奈は気付いたのか、合っていた目をフッとそらした。
それをみて、一瑠はさらに面白そうな顔をする。
「だって…。」
柚奈は力のこもりきらない声で、独り言のようにそう漏らした。
しかしそれは、はっきりとした意思を持って、一瑠に向けられた言葉だった。
一瑠は返事のかわりに真っ直ぐ合わない目を見つめる。
こういうとき、下手に反応をしっかりすると、相手は言いにくくなってしまうことを、彼女は心得ているのだ。
そうして、一言も聞き漏らさないよう、柚奈の言葉に耳を傾ける。
短い沈黙が流れた。
「好きです!
…ごめんなさい。
なら、まだ傷は浅くてすむけど、
好きです!付き合ってください!!
…ごめんなさい。
は、相当なダメージくらうよ?」
いきなり1人芝居を始めた柚奈を哀れむように見つめる一瑠。
無駄に声がでかいのは恥ずかしさを紛らわすための勢いづけなのか。
隣のクラスに人はいなかったかと心配する。
もしいたら聞こえていたかもしれない。
そう。
先程の柚奈の告白は、一瑠に向けた愛のあるものではなく、告白の練習として向けられた言葉だったのだ。
ゆえに、声に力がこもっていたのだ。
きっと、本番では、こうは声が出てはこないであろう。