少女達は夢に見た。
第6章 依存
その翌日からだった。


柚奈が私に普通に話しかけてくれるようになったのは。


歩乃香にはそれが違和感だったみたいで、私に問いかけてきた。


「柚奈と仲直りできたんだ?」


私達の事件が喧嘩と呼べるものだったかは怪しいが、


一応和解できたという意味では仲直りしたことにはなるのだろう。


「まあね。歩乃香のお陰だよ、ありがとう。」


「そ、そんなことないよ。でも……どういたしまして、なのかな?」


そんな会話をしたのが3日前のこと。


中学生の人間関係なんて不思議なもので、


簡単なことで崩れるなら、治すのもまた簡単だ。

特に中学に上がってから、人間関係における衝突なんて無かったから、新発見だった。


かといって今回の出来事を軽く受け止めることなんて出来るわけがなく。


もう、けして今回の様なことを繰り返したくない。


柚奈は私の大切な幼馴染み。


自分のせいで傷つけるなんて、もう、ごめんだ。










「一瑠、次移動だよ。はやく行こ!」


「うん!」


自然と、柚奈2人で行動することが多くなり


アキや歩乃香と話すことは減った。


柚奈も、斎藤組からは抜けたようだった。


すごく嬉しかった。


「あのさ、最近風見君と話してる?」


「話してないよ。あれから目もあわせてないから」


移動中に柚奈がそんなことを訊いてきても、やましいことなどなにもない。


本当に、目も合わせていないのだから。


「別にそこまでしなくても。」


と苦笑しながら柚奈は言う。


「まだ好きなの?」


「風見君のこと?まさか。」


「へぇ。」


乙女の恋のなんて脆いことか。


そう思いながら安心なぞしている私は、悪魔か。





「あのさ、いち。」


「なに?」


部活中のことだった。


影のある面持ちでカナンが話をふってきたのは。

「一瑠風見のこと避けてるでしょ」


「なんで?」とカナンが続けるが答えることができない。

カナン、怒ってる?


カナンは怒っているとき、人の呼び方が変わる。

それが意識的なのか無意識なのかは知らないけど。


「ねぇ、なんで?」


言えるわけがない。


ここは美術部なのだ。


当の本人がすぐ近くにいるのに、話せるわけがない。


そんな度胸無い。


「部活終わったら…ね?」


しらばっくれるのが一番理想的だった訳だけども

いつもと違う空気をかもし出すカナンに圧倒され、


そう答えてしまった。


いや、どのみち隠し通せるわけがなかった。


カナンは美術部なのだ。

カナンが問いかけ続けてきたら、しらばっくれるなんて不可能だ。


私の言葉に納得してくれた様子で、作品づくりを再開させる。



ホっとなどできなかった。


カナンのオーラがピリピリと張りつめたままだったのだから……。


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