Under The Darkness




「あ、ありがとう! 二度も助けてもろて、なんてお礼言ったらいいんかわからんけど、……あっ、それと顔怖っとか思てゴメンなさい! とにかく、ありがとう!」



 口早に、私は叫ぶようにして言った。

 その途端、京介君が爆笑して、私はきょとんとなる。


「あっはは! ヤバいな、面白すぎる。どうして貴女はそんなにも素直な感情が表に出るんでしょうね。バカ正直で人を疑わない無知な所がとても新鮮で面白いです」


 唇がへの字に曲がってしまう。

 お礼を言っただけなのに。


 ……とても面白いと評されてしまった。しかも、正直にバカという枕詞《まくらことば》までつけて。しかも無知って何だ。私が勉強全くできないのなんで知ってるんだ。


 なんだろうな。すっごいムカつく。

 だいたいなんて答えたらいいのか。

 大阪人らしく、『面白い』や『バカ』は、ざっくり賛辞として受け止められます。かな? それとも、褒めてくれてありがとう?

 いや、違うな。そもそも褒められている気が全くしない。

 どっちかというと、馬鹿にされてる感が否めない。


 ……うん。やっぱムカつくな。


 じっと京介君を見つめる私の目は、きっと切れそうなほど鋭いに違いない。

 じとっとガンをつけていると、京介君の肩がフルフルと小刻みに震えだした。

 そして、耐えきれないとばかりに私から顔を背けたと思ったら、京介君は身体を前に倒して、お腹を抱えて笑い出してしまったのだ。
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