2つの月の女神
2つの月の女神

これはお月様の誰も知らない物語


  
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昔昔、それはそれははるか昔のお話です。

まだこの星は太陽だけが光り輝き、夜は真っ暗闇に包まれていました。

この星には、太陽の父スホと二人の女神ルゥとシウがいました。

二人の女神は、それはそれは仲のよい姉妹でした。
朝起きてから、食事をするときも、歌を奏でるときも、寝るときでさえも、
二人は一緒でした。

ルゥが笑えば、シウも笑い、シウが悲しめば、ルゥも悲しみの涙を落としました。

二人の心はまるで繋がっているかのようでした。

そんな二人も成人を迎えました。

成人したある日、二人は父スホから告げられます。

『明日から、お前達は月となって、この星の夜を照らさなければいけません。』

二人にとって、これは名誉なことであり、そしてこうなることは生まれた時から決まっていることでした。

けれど、それはずっと片時も離れず一緒にいた姉妹との永遠の別れを意味するものだったのです。

何故ならこの星の反対側をそれぞれが照らさないといけないからです。

ルゥとシウはお互いを想い嘆き悲しみました。

父スホもそんな二人をただ見ていることしか出来ませんでした。

「ルゥを思って光を降り注ぎましょう。どうか私を忘れないで。」

「私もシウを思って光を降り注ぎましょう。どうか私を忘れないで。」

二人は覚悟を決め、別れを告げました。

そうして二人は月となってこの星の夜を照らし始めました。

その光は優しく眩しくそして悲しくこの星に降り注がれました。

ーーーーーーーーーーーーーーー。

長い年月がたって、

ある時、この星に巨大な隕石が近づいていることを知ります。

『この星も終わりかもしれない。』

父スホの言葉でした。

でも月になった姉妹は思うのです。

「私があの隕石を止めたら・・・・。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「この星も、ルゥも守れるかもしれない。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「この星も、シウも守れるかもしれない。」

・・・・・・・そうです・・・・・・。

心の繋がりからなのでしょう。

まったく同じことを、姉妹は反対側にいながら考えていたのでした。

やがて激しい轟音と共に、赤い炎を纏った隕石が近づいてきました。

月である女神ルゥとシウは、

私が・・・・・と

それぞれ、隕石に向かっていきます。

そして二人は驚きました。

あなたを守りたかったのに・・・・・・。

この星の空に初めて二つの月が並んで夜空を照らしました。それは切なく儚げな光りでした。

けれどそれはそれは綺麗な月夜でした

けれど隕石はもう目の前に迫っていました。

二人はすべてを受け入れ隕石に身を投じました。

二つの月は、大きな轟音と共に大きな光を放ち隕石を止めることが出来ました。

けれど隕石にぶつかった片側が崩れ割れてしまいました。

父は、この二人の女神のお互いへの思いに胸を打たれ、

その半分になった月同士をあわせて、

一つの大きな月にしてあげました。

こうして、今の月が出来たのです。

きっと今夜も、一つになり、いつも一緒にいられるようになった女神ルゥとシウが、より一層綺麗にまるで歌を奏でるように光を降り注いでくれるでしょう。
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