翼~開け放たれたドア~
…ん?

なんか、黒髪が近づいてきた。

龍也の服の裾を思わず握りしめた。

私の目の前でピタッと止まった奴。

「なに」

「……お前、なんでそんなに怯えている」

「!?」

怯えている…?私が?何に?

私は、なにが怖い?

私は──…



奴に顔を覗き込まれ、ふいに前髪をどかされる。

「…っ!」

いやだ。いやだ。

こいつは、このひとは、

──雷たちじゃない。

「や、めろ!」

思わずその手をはらった。

「お前のその目──」


──ズキン

「…っ!!」

「は、春輝さん!!?」

「はっ…」

頭が痛む。呼吸が上手くできない。



頭の中に流れ込んでくる映像。

頭の中で響く音。

“お前のその目、その髪が──”

止めて

“──の子供ごときに”

なんで

“この恥さらしが!”

あぁ…そうか

“お前は、いらねぇ子なんだよ”

私は──

「春輝さん!!」

「おい!?」

「春輝!!?」

私は、その“私をみる目“が怖い──…

意識がなくなっていく中で、みんなの焦った顔が、見えたような気がした。



< 36 / 535 >

この作品をシェア

pagetop