明日、嫁に行きます!
「ああ、そうですね。正解ですよ」
そう言って、彼はなぜか嬉しそうに破顔する。
「名前、教えてませんでしたね。僕は、」
「教えてくれなくてもいいです。だって、もう会うこともないだろうし」
間髪入れず拒絶を示した私に、彼は言葉を失いその場に固まってしまう。驚きの中に混じる寂しげな表情に、ちょっと言い過ぎたかなと自責の念に駆られたけれど。でも、もう二度と会うこともないだろうから、名前なんて聞いても仕方ないと思うんだ。
今までの無礼を反省した私は、礼儀正しく「さよなら」と綺麗なお辞儀をして、ホテル内にあるタクシー乗り場まで、後ろ髪引かれる思いを振り切り駆け出した。