明日、嫁に行きます!
「た、たかじょ、さん! 待って、待ってっ!」
二の腕を掴まれ、廊下を引きずられるようにして、寝室のベッドの上へと放り出されてしまう。
スプリングで身体が大きく跳ねた。すぐに身体を翻し、ベッドから降りようとしたんだけど、のし掛かってきた鷹城さんに両手首を頭上で拘束されて、ベッドの上に縫い止められた。
「ごめんなさい、黙ってて、嘘……ついて、ごめんなさいっ」
必死に謝った。けれど、私の謝罪の声は全く聞いてもらえなくて。
サイドボードに出しっ放しになっていたネクタイで、私は両手首を括られて自由を奪われてしまった。
「たか、じょう、さん!」
悲鳴のような私の声。
仰向けになった私の上で、鷹城さんは暴れる私の足を押さえつけるようにして跨ぎ、着ていた自分のシャツを乱暴に脱ぎ捨てた。
そして、彼の手が私の服にかかり、引き千切るようにして剥がされてゆく。
「やあぁっ! やだ、おねが、も、やめてっ! ……怖いよっ」
怖い、怖いよ。
表情を消した冷たい顔で、昏い怒りを宿した恐ろしい眸で私を見ないで。
嫌われてしまったのだと、私の謝罪の言葉など聞くに値しないと、そう言われてるみたいで、辛い。
黙っててごめんなさい。でも、少しでも傍にいたかったから。貴方の温もりを感じたかったから。
だから、言えなかった。
離れるのが辛かったから、口に出すことが出来なかった。
ごめんなさい。
本当に……ごめんなさい……。
「……泣くな」
鷹城さんの大きな手が私の髪に触れる。切れそうに鋭い眼差しが、ふっと緩む。
私に触れる彼の手がとても温かくて。優しく感じて。
目尻から涙がひとしずく零れ落ちた。
「寧音、二度目はない」
彼の言葉に、ひくっと嗚咽が漏れる。
「どんな理由があろうとも、次に逃げ出したら」
鷹城さんの顔が私に近付く。口付けられると思って、ぎゅっと瞼を閉ざした。
けれど。
「あッ、痛いッ!」
首筋に口付けられて、そのまま思い切り噛みつかれた。濃い血の香りが鼻腔をくすぐる。噛みつかれズキズキと痛む箇所を、彼の舌がぞろりと這った。
ブワッと首筋の産毛がそそけ立つ。
「寧音の自由を奪います」
唇の端に付いた血を、鷹城さんは、私を見据えたまま見せつけるように舌で舐め取り、そして、鉄の味がする唇で、私の口腔を激しく犯した。