明日、嫁に行きます!


 鷹城さんは私を抱く時、強引なだけでなく執拗に私を翻弄する。
 もうムリだと非難の声をあげても、彼はニッと唇を歪ませるだけで、なにひとつ聞き入れてはくれなくて。
 嗜虐に輝く彼の眸は、明らかに私の反応を愉しんでいた。けれど、焦げつくほどの熱情が浮かぶ彼の眸の中に、真意を推し量るような、私の感情の変化を細微に渡り観察しているような、そんな冷静な色が常に混じっていて。
 セックスの最中にあっても、劣情だけに染まらない眸。
 私はそんな眸を今まで見たことがなかった。

「ふ、くぅ……もう、ムリ、ム、リィッ」

 幾度も意識を手放しては引き戻される。そして、終わらないループにまた迷い込む。延々その繰り返しだった。
 彼も何度か果てたはずなのに。安堵を見せる私に、彼はまた牙をむく。内臓がひっくり返りそうなくらい身体を揺すられながら、朦朧とした頭に疑問が浮かんでくる。

 ――――鷹城さんは、どうしてまた私を抱くのかな。

 昔出逢った少女が私ではないって知ってるはずなのに。
 それなのに、私を抱く理由って、一体何だろう。
 嘘をつかれて、裏切られた怒り?
 逃げたら許さないって言ってたけど、彼はちゃんと理解できていないのではないか。
 昔出逢った少女が、私ではないという事実を。
 彼が望む『天使』が私だと信じてしまっているから、こうしてまた私を抱くのかな。

 けれど、そんなことを考える余裕も思考も、すぐに奪われてゆく。
 躰はすでに悲鳴を上げていて。
 脳裏に過ぎった疑問も、泡のように弾けて消えてしまう。
 ガクガクと揺さぶられながら、もう限界だと、許して欲しいと訴える。
 でも、酷薄に歪む微笑を浮かべる彼は、私を許してはくれなくて。

「大人を翻弄した罰です。……こんなもので済むと思うな」

「ひっ、きゃ、ああっ」

 体格の差は大きくて。乱暴に、おもちゃのように身体を返され、再び嬲られる。
 もう、本当に無理だ。
 頭が真っ白になる。
 何も考えられなくなる。
 唇の端からは、嚥下しきれない透明なしずくが滴り落ちてゆく。
 背後から抱きしめてくる鷹城さんの熱くて荒い吐息が、私の背中に熱を点した。

「あッ、あ、くッ、もぅ、むり、やッ、あ――――ッ!」

 白に染まった私の意識は、次の瞬間、闇と混じり合い溶けていった。

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