スイートナイト
私のスマートフォンには巽くんの、巽くんのスマートフォンには私のアドレスが入った。

アドレス交換なんて…きっと、他の女の子にもしているに決まってる。

私だって、今は連絡はとってないけど、学生時代に仲良くなった男の子のアドレスを持ってる。

巽くんのスマートフォンにだって、女の子のアドレスがいっぱいあるんだから。

これはあくまでも社交辞令。

自分の指名客を集めるための、ある種の商法よ。

「アドレス、サンキュー♪」

お礼を言った巽くんの無邪気な笑顔に、
「こちらこそ」

私は律儀に返事をしていた。

どうせ交換しただけで、電話もメールもしてこないわ。

きたとしても、店にこいとかそんなものよ。

私は自分に言い聞かせると、巽くんのアドレスが入ったスマートフォンをジーンズのポケットに戻した。
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