ここに在らず。

新たな人物



聞こえて来た声の方へと私は振り返った。するとそこには、私服姿の男性が立っていた。


「いつもここに居るよな。今は昼休みか何か?」


そう尋ねる男性はもちろんうちの生徒ではない。きっと一般の利用者の方だろう。

…でも、なんだか可笑しい。だっていつもって、一体いつからの話?


確かに私はずっと前からここに通っている。でもそれは、いつもという言葉でくくれる程の歴ではない。

小中高一貫教育のこの学校で小学生の頃から通う私はもはや図書館利用者の中で言わずと知れた存在だったりする訳で、特にこの地域が特殊なのか、ここらでは例の本邸の人達の事を知らない人なんて居ないし、それと同時に私の生い立ちも全てその大体の人が知っている。

…つまり何が言いたいかというと、それを知った上で私に話しかけて来る事なんてこの地域の住民ならあり得ないと、私はそれが言いたい訳で。


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