キケンなアイツとの生活
大切な人の死
『あいり……パパの、いうこと……ちゃんと、きくのよ……しあわせ、にね……』


ママが、お空へいってしまったのは、わたしが十六歳の時だった。


季節は春で、ちょうど桜が満開だった。


そんな満開の桜を見て、ママは〝キレイねぇ〟って、喜んでた。


それから、わずか五日後の四月六日に逝ってしまった。


癌が見つかった時はもう手遅れで、ホントにあっという間だった。


まだ三十六歳。これから人生楽しいことだってあったはずなのに。


ねぇ、ママ。幸せだった…?


〝気をしっかり持ってね〟
〝パパと二人で頑張るのよ〟
〝なにか困ったことがあれば言ってね〟


ママのお通夜とお葬式では、知らない親戚の人たちもたくさんいて、イロイロな言葉をかけてもらった。


でも心が空っぽだったわたしには、どの言葉も耳に入ってこなくて、いつもどんな時でも笑ってたパパでさえ、この時だけは声を上げて泣いていた。


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