砂漠の夜の幻想奇談
第七話:“災厄の母”


 午後の陽射しが降り注ぐ暖かな中庭。

頭に響くような刃がぶつかり合う音さえなければ、そこは昼寝に持って来いの場所だっただろう。


(うう~…カシェルダが押されてる…!あっ!上手く避けてシャールの右に……ああ!シャール危ないぃ!!)


手に汗を握るとは、まさにこのこと。

サフィーアは中庭の端っこで冷や冷やしながら男達の激戦を見物していた。

手出し無用、口出し無用。

止めに入ってきたら叩き切ると脅され、大人しく決闘を見守っているが…。


(どうしよう…!これ以上ひどくなる前に、どうにかして止めさせなきゃ!)


未だ諦めてはいなかった。


(二人とも怪我してるのに…無茶よ)


シャールカーンの手は血まみれだし、カシェルダだってまだ頭の怪我が完治していない。

互いにハンデを負いながらも、しかし「やる」と言って聞かないのだ。


(なんで殿方ってバカなの!?)


自分が原因なだけに余計腹立たしい。


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