ヒールの折れたシンデレラ

「では自己紹介といきましょうか。最初に三島(みしま)さん」

そう言われて千鶴の前に座っている清楚な女性が立ちあがった。

「三島華子(みしまはなこ)です。ここでは一番入社年次が早いのでわからないことがあれば聞いてくださいね。
社長の秘書をしております」

最後に綺麗に頭を下げて席に着いた。

楚々とした雰囲気がとても落ち着いて見えた。肩に届くぐらいの長さの黒髪は天使の輪っかが見えるほどに手入れされていている。

涼しげな瞳が印象的だ。控えめなイメージだがそこには凛とした美しさがある。

千鶴が華子についての印象を脳内でまとめていると次の女性に勇矢が自己紹介をうながした。

「遠山園美(とおやまそのみ)です。日下専務の秘書をしています。実家は呉服屋を経営しておりますので、お着物が必要な場合は声をかけてくださいね」

まるで新入社員のような挨拶をした園美は、千鶴よりも若い雰囲気だ。若いと言うよりもどこか幼い印象を受ける。

ふわふわとした肩までの髪を後ろでハーフアップにしている。ドングリのようなくりっとした瞳を興味深そうにきょろきょろと動かしてた。

おそらく葉山デパート全店にテナントとして入っている、全国でも歴史も実績もある遠野屋の娘ということだろう。

たしか近い親せき筋に国会議員がいたはずだ。

園美も葉山の籍に入るにはもってこいの子だ。
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