偽装結婚の行方
「何だよ、いきなり……」


今まで真琴と色恋沙汰の話をした事はあまりなく、しかもいきなりだから俺はちょっとびっくりした。


「あれからずいぶん経つのに、どうしたのかなと思ってさ……」

「“あれから”って?」

「あんたが彼女に振られてからよ。名前は忘れたけど、確か会社の同期の女の子だったわよね?」

「ああ、その事か……」


確かにそんな事があった。今から2年、いや3年前だったかな。会社の同期の女子から付き合ってほしいと言われ、特に嫌いなタイプでもないから付き合ったのだが、1年もしないでダメになった。

ダメになった理由ははっきりしないが、俺から別れ話をした覚えはないから、たぶん真琴が言う通り俺は振られたのだと思う。

あの時俺は、その事自体はあまりショックに感じなかったのだが、最後に彼女から言われた言葉は少々ショックだったし、今でもはっきり覚えている。


『中山君って、見た目はいいんだけど中身が面白くないわ』


と言われたんだよなあ。

確かに俺にはユーモアのセンスとか全然ないし、面白みに欠けるとは思うけど、他人から面と向って言われたのはあれが初めてだと思う。

……ん?
学生の頃にもあったかな。

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