伸一君は当然ながら布団には見向きもせず、一番重いベッドを掴んだから、俺もそれに手を伸ばした。伸一君と二人で持とうと思ったからだ。


「俺一人で持つから大丈夫っす」

「いやいや、これ、結構重いから二人で持った方がいいって……」

「大丈夫っす!」


伸一君は怒ったみたいにそう言い、っていうか実際怒ってるのだが、一人でベッドを持ち、部屋を出て行った。

そんな彼を呆然と見送っていると、


「すみません。弟が失礼な態度ばかりとって……」


と、尚美が申し訳なさそうに言った。


「いいって。俺は悪役だから、仕方ないさ」

「え? 悪役……ですか?」

「それはこっちの話。それよか、敬語は禁止だぞ? 伸一君に怪しまれるしな」

「あ、そうですね。じゃなかった、そうね。気を付けなくちゃ……」

「そういう事。よいしょっと……」


とか言いながら、俺は布団を持ち上げた。重くはないが、大きいから困る。伸一君は手伝ってくれそうもないしな。


「私も持ちます」

「いや、大丈夫だから」


尚美が手を貸してくれようとしたが、危ないから断った。すると、


「じゃあ、私はこれを……」


そう言って尚美は大きなボストンバッグを掴んだ。


「それ重いから、やめた方が……」

「いいえ、大丈夫です。よいしょっと……」


実際に重いのだが、尚美は歯を食いしばりながらそれを持ち上げた。そんな尚美が健気で可愛くて、つい俺の頬が緩んだ。

阿部も言ってたが、やはり尚美は性格がいいし、真面目なんだなと、俺は再認識をした。

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