俺はいつも通りの通勤の支度をして真琴のアパートを出た。朝から良く晴れているが、さすがに1月の空気は肌を刺すように冷たく、ぶるっと身震いがした。

すぐにポケットから携帯を出し、凍えそうな指で通話履歴を開き、尚美の名をタップした。本当はもっと早く電話したかったのだが、真琴がいる所でそれをするのは気が引けるため我慢していたのだ。


間もなくして呼び出し音が聞こえて来た。拒否られたらどうしようかと思ったが、それはなさそうだ。尚美が出たらどう話を切り出そうかな。尚美から本当の事を聞き出したいが、電話でというのはどうだろう。会社の帰りにそっちへ行くと言うか?

うん、それがいいだろう。とにかく、早く尚美の声を聞きたい。尚美と話したい。そう思いながら尚美が携帯に出るのを待った。ところが……

いくら呼び出しても尚美は携帯に出なかった。なぜだ? マナーモードにしていて着信に気づかないとか?


俺は駐車場に止めてある自分の車に目をやり考えた。会社をサボり、車で尚美のアパートへ行こうかなと。


だがそれは止め、携帯を仕舞って駅へ向かって歩き出した。会社へ行くために。と言っても仕事を優先したからではない。尚美の事に比べたら、はっきり言って仕事なんか二の次だ。


会社へ行くのはある目的があるからだ。もっと言えば、ある人物と会い、話をするために……

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