極上エリートの甘美な溺愛


将平は、暗い表情を隠すことなく会議室から出てきた。

朝からずっと頭に浮かんでいるのは、夕べ見せられた玲華の泣き顔ばかりだ。

その顔にやられてしまった、というよりも、高校の時にとっくにやられていたんだと改めて実感する。

高校時代、あれだけ玲華を傷つけておいて、拒否してないなんて……よく言えたよな。

今更何が拒否してないだよ。

高校の時に俺に傷つけられて、そして今もまた泣かされて。

あれだけ魅力的でいい女に成長したっていうのに過去の亡霊に再会して心乱されて泣かされて。

諦めるつもりはないとはいっても、玲華にとって何が幸せなのかを考えると、自分が思いあがった情けない人間だと実感させられてどうしようもない。

玲華を今度こそ手放したくないとは言っても、さすがに泣かれると自分の気持ちも揺れる。

夕べ別れてから何度も同じ悩みを繰り返している。

エレベーターを待ちながらも、将平は知らず知らずため息ばかりを吐いている。

「泣いてるみたいな顔してるよ」

 一緒に会議に出ていた千春が将平の背中をたたいた。

「……泣いてないし」

「玲華ちゃんとけんかでもした?」

「……してない」

「じゃ、ふられた?」

「……かもな」

「あらま」

「……何も言うな。今は千春の軽口に付き合う余裕はないから」

「へえ。今までの将平とは思えないほどの弱気な発言。その落ち込んだ顔、写真に撮りたい気分」

「……うるさい」

「あらあら」

にやりと笑った千春を残し、将平はさっさとエレベーターに乗り込む。

そのまま千春を待つことなく扉は閉まり、取り残された千春は肩をすくめるが、扉が閉じた瞬間、悪魔の笑顔を浮かべると、ポケットからスマホを取り出した。

「あ、慎?楽しい事を思いついたんだけど、のらない?」

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