Sweet Room~貴方との時間~【完結】
目覚めたら……
 いつもと違う枕の硬さとシーツの手触り。ゆっくり目を開けると、中途半端に開いたカーテンから、朝日が部屋を照らしていた。まだ、ぼやけている視界を鮮明にさせようと、数回瞬きをする。すると目の前に黒い塊が……。無意識に手を伸ばした。

 何かふわふわする。小さい頃、実家で飼っていた黒いポメラニアンのメルを思い出した。あの頃みたいに、メルを胸に抱きしめる。

「ううん……」

 うん? メルはこんな唸り声は出さない。「キャン」と言う、かわいい鳴き声だった。
 胸の中にいるメルをよく見た。それは犬ではなく、人間だった。

「キャーー!!」
 条件反射で人間を突き飛ばした。

「イッテー!」
 その声は明らかに男の声で、大したガードにもならないが、シーツを自分の方に手繰り寄せて体を隠した。

「おはようございます。佐伯さん」
 脇腹と膝を摩りながら立ち上がったのは、後輩の杉山 涼太だった。

「杉山ぁぁ! 何でアンタ、私と同じ部屋で同じベッドに寝てるのよ!」
「佐伯さん。昨日の記憶どこまでありますか?」と言いながら、杉山は面倒臭そうに頭を掻きながら、もう1つのベッドに座り、私の顔を見た。
< 1 / 207 >

この作品をシェア

pagetop