Sweet Room~貴方との時間~【完結】
ブルーマウンテンよりコーヒー牛乳
 月曜日の空は晴天。それとは正反対の冷たい風が吹いている。
 9月か。そろそろ、秋も近いな。
 駅の改札を出て、スーツ姿のおじさんをガンガン追い越す。
 こんな寒い日にダラダラしていたら、朝から気が滅入るのよ。しゃきっとしないと。
 コンビニの横を通り過ぎたとき、後ろから声をかけられた。

「佐伯さん、おはようございます」
「杉山、おはよう」
 つい、さっきまでの気合が軽く抜けてしまった。

「一昨日はちゃんと家に帰れましたか?」
「当たり前でしょ。小学生じゃないんだから」
「ねえ、杉山。あの、この前のことは……」
「言いませんよ。俺は、佐伯さんを家まで送って帰りました。それが金曜日の夜のことです。それ以外は何もありません」

 杉山が言いふらすようなタイプでないことは分かっている。でも、事務所に行けば誰かが絶対に聞いてくる。それは目に見えている。だから一応、話しておきたかった。

 でも、杉山は当たり前のように言ってくれた。ただ送っただけ、と。
 土曜日の朝の杉山を見てイメージが変わった。まだ少年の雰囲気が漂う後輩から、人の気持ちを汲み取ることができるイイ男になった。

「ありがとう」と、杉山の顔を見上げながら言う。

 杉山は少しだけ目線を下げて微笑んだ。その仕草に、不覚にもドキッとした自分がいた。

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