私の故郷にある山には、ヤママユガがたくさん生息している。
 手のひらほどもある大きな山吹色の蛾で、毒はないが目の前を通過されたりするとびっくりしてしまう。

 夏の終わり頃、この蛾の幼虫は小枝についた葉の間にその名の由来となっている繭を作るのだ。
 きれいな緑色の繭で、昔はこの繭から蚕のように糸を取ったりしていたらしい。

 そして私の故郷には奇妙な言い伝えがある。


 紅い繭を見たものは幸福になれる。けれど決して触れてはならない。


 どうして触れてはならないのか。子供の頃に訊いたことがある。
 母が言うには、ずいぶん昔だが見た人は実際に何人かいるらしい。そして触った人もいたという。
 触った人がどうなったのかは、母も詳しくは知らないらしい。
 私は気になって、事あるごとに紅い繭の事を母に尋ねた。

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