「海棠さんも独身ですよね? どうです? 係長なんて」
「え?」


 なんで私? 美佳ちゃんもいるのに。
 助けを求めるように美佳ちゃんに視線を送る。ところが彼女は坂井側についた。


「いいじゃないですか。海棠さんって入社したときから本郷さんと仲良しなんですよね?」
「いや、私の指導係が本郷さんだっただけで仲良しってのとは違うと……」


 失礼にならないように気を使いながら否定しているのに、坂井くんと美佳ちゃんは人の話を聞いていない。


「ですよね。年齢的にもちょうどいいし」
「二人とも気が合うみたいだし」


 すっかり意見の一致を見ているふたりに、口を挟む隙がない。
 どうしてこういう話になると、みんな近場で適当にまとめたがるんだろう。もっと視野を広く持つべきだと思う。


「そういうおまえらこそ気が合うみたいじゃないか。いっそ結婚したらどうだ?」


 からかう本郷さんに、美佳ちゃんは思いきり顔をしかめた。


「えー? やだー」


 本郷さん、グッジョブ。そして美佳ちゃん、正直すぎ。
 結局、結婚話はそのままうやむやになり、私は内心ホッとした。
 その後は他愛のない話をしながら飲食する。そして飲み会は九時にお開きとなった。

 会計を済ませて店を出るとすぐに、美佳ちゃんはバスの時間があると言ってさっさと帰ってしまった。坂井くんは方向が違うし、駅までは本郷さんと一緒に帰ることになりそうだ。

 実は店の暖簾の陰にザクロが迎えに来て立っている。ザクロが一緒にいるとき、他の人がいるとやはり落ち着かない。

 本郷さんたちには見えていないとはいえ、やはり気になって、私はこっそりザクロに視線を送った。
 目ざとい本郷さんは私の視線に気付いて、チラリとザクロの方を見る。見えてはいないと思うけど、ちょっと気まずい。


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