ザクロは私と目が合うと、いつものようににっこりと微笑んだ。この笑顔を見ると安心する。


「夕方から夜の間は何してたの?」
「テレビを見ていました」


 やっぱり思った通りだ。

 それからお酒を飲みつつ、あたりめをつまみつつ、ザクロの見たテレビ番組の話を聞く。文字はなんでも手当たり次第に読むらしいが、テレビ番組は好みがあるようだ。

 ニュースや旅番組、教養番組が特に好きで、お笑い番組やクイズ番組は見ないらしい。お笑いやクイズは現代の基礎知識がないザクロには、意味がわからないのだろう。時々ドラマも見ているようだが、ニュースやドキュメンタリーと区別が付いているかは謎だ。

 帰りが遅いことも多い私は、あまりテレビを見ないので、ザクロからニュースの話などを聞くのは結構ありがたかったりする。

 楽しそうにテレビ番組の話をしていたザクロが、ふと寂しそうに目を伏せた。


「テレビを見ているときは楽しいんですが、番組が終わって外が暗くなったことに気付いたとき、頼子がいないと部屋の中が冷たく感じました」


 うわぁ。すごく嬉しい。それって私がいないと寂しかったってことだよね。もう、かわいくって抱きしめたい。

 私はニマニマと緩む頬を押さえつつ、照れ隠しにお酒をぐびぐびとあおった。

 あれ? なんか目が回る。身体から力が抜けていく。グラスがすごく重い。

 カタリとぶつけるようにグラスをテーブルに置くと、ザクロが心配そうに顔を覗き込んできた。


「大丈夫ですか?」


 いやーん。そんなきれいな顔を近づけないで!

 ドキドキと高鳴る鼓動にあわせて、益々酔いが回ってくる。ぐるぐると回る視界が天井に変わったと思ったら、私の身体はザクロの腕の中に抱えられていた。


「一息に飲んだから酔いが回ったんですね。すぐに水をお持ちします」


 ザクロが私をベッドにもたれさせて立ち上がろうとした。私は無意識のうちに彼の腕を掴む。


「や。そばにいて」


 ザクロは黙って私の身体にブランケットをかけ、隣に座った。目を閉じてゆっくりと彼の肩に頭をのせる。まだ頭の中はぐるぐる回っている。

 傾いた身体を再びザクロが抱き止めた。私はその腕につかまってザクロの胸にすがりつく。鼓動は聞こえない。死なない妖怪は心臓がないようだ。けれどザクロの身体は暖かい。

 その心地よさにつつまれて、私は睡魔に屈服した。

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