だいたいわかったが、まだこいつの目的はわからない。私は単刀直入に尋ねた。


「どうして私に取り憑いたの?」
「あなたが私に触れたからですよ」
「そうじゃなくて、取り憑いた目的はなに?」
「あなたの生きる目的はなんですか?」
「へ?」


 逆に問い返され、私は絶句する。生きる目的って、ようするに生き甲斐? そんなもの考えたことすらなかった。

 面食らっている私に、妖怪は穏やかに微笑む。


「私も同じです。特に明確な目的があって生きているわけではありません」


 確かに私も同じだ。どうしてもやり遂げたい目標があるわけでもなく、かといって自ら死にたいと思うほどこの世を儚んでもいない。だからお腹が空いたらご飯を食べて、ご飯を食べるために働いている。そうして命を長らえさせている。


「あなたが死にたいと思っていないのなら、あなたが心安らかに健康でいられるようにご助力いたします。それが当面の目的ですね」


 私が死んだり病気になったりしたら、こいつも弱ってしまうってことだろうか。

 どうやら危害を加えるような、危ない妖怪ではないようだ。それどころか、便利な奴かも。なんでもいう事きくって言うし。

 私はようやく武装を解き、お嬢様になったつもりで妖怪執事に命令した。


「お茶をいれて」
「イエス、マイロード」


 うわぁ。一度言われてみたかった。美形執事に。
 でも、一度でいいわ。なんかムズ痒い。


「ごめん。マイロードって呼ばないで」
「ではなんとお呼びすれば?」
「頼子。私は海棠頼子(かいどうよりこ)っていうの。あなたは?」
「私に名前はありません。ご自由にお呼びください」
「じゃあ、ザクロ」


 髪も目も繭もザクロ色だから。


「かしこまりました。ところで囲炉裏が見あたりませんが、どこで火をおこせばよいのでしょうか」

「え……。あなたいつから眠ってたの?」


 詳しく話を聞くとどうやら江戸時代から眠っていたらしい。

 姿や言葉遣いは私の願望が反映されているらしいが、それ以外は浦島太郎状態のようだ。

 誰が便利な奴だって?

 私はため息と共に、使えない妖怪執事に台所家電の使い方を説明する。
 こうして、私と妖怪執事の先が思いやられる共同生活が始まった。





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