狂妄のアイリス
「罪悪感はないんですか?」

「もちろん、あるさ。だからこうして蛍の相手をしてるんじゃないか」


 示したのは、白菊の花束。


「無理しなくていいですよ」

「まさか。かわいいと思ってるさ」


 花を見下ろし、愛おしそうにその花弁を撫でる。

 死者に手向ける花は、死者の思い描く色に染まるよう白が選ばれる。

 思うがままに、好きな色に染めて心満たして。


「そう睨むなよ」


 愛おしげな頬笑みは苦笑に転じる。


「ずいぶんとまぁ、俺も嫌われた物だな」


 男は、青年の射殺すような眼差しにさらされていた。


「全部オマエが悪い」

「否定はしない」

「オマエがッ――!」


 青年が男に牙を剥き、つかみかからんとした瞬間。

 空気を切り裂く悲鳴が響いた。


「いやあああああああああああああああああああ!」
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