可愛くないって言わないで!!


いつもより、少し強い口調で言った沙弥。


沙弥が事故にあった1年生の時、担任だった清水先生。



きっと、頼りにしてたんだろうな。

良い先生だもん。



「あの人が良い先生なのは知ってるよ。みんなに好かれてるんだね」


「うん。高校も、清水先生が先生やってくれたらいいのにって思うくらい」


「沙弥。それ相当先生のこと好きだね」



からかうと、沙弥は白い肌をほんのり赤くした。


わー。照れてる。



「沙弥~。彼氏の前でその反応はどうなの?」


「えっ」


「ははは。俺は別に気にしないよ」



焦る沙弥とは対称的に、小津くんは余裕だ。


彼氏の余裕? イケメンの余裕?

まあ、冗談だし。

相手は先生だしね。



「よし。資料漁るか」









この日は海が夕焼け色に染まるまで、進路指導室にこもっていた。



受験。

そのあとは卒業。



いやでもあたしたちには、別れの時が訪れる。








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