双世のレクイエム

問3:二方、思如何程何




頭が、ぐらぐらする。

少年・ワタルは原因不明の頭痛に悩ませられていた。特に意味もないが、助けを求めるように手を伸ばせど何もない。

そのまま腕を伸ばすにも疲労は溜まるので、力なく垂れ落ちようとするのだが。


「おっと、起きはりましたのん。ひやこいお水持ってきましょか?」

「……。」


落ちる前に、聞いたことのある口調の者がワタルの手を掴み、優しく握っていた。

視線を移せば、蒼い髪。


「【療杏】(りゃおあん)、さん…」

「名前覚えといてくれはったんやねえ、おおきに。ほいで、調子はど?」


ひんやりした手がワタルの頬に触れる。その冷たさが今のワタルにはとても気持ちが良かった。


「ん、熱は下ごうとるみたいやね。心配しましたわあ、ここ2日は眠ってはりましたもん」

「2日…?あの、俺、一体…。ていうかここは」


辺りを見回せば、見知らぬ部屋に見知らぬ家具。そしてワタルも見知らぬベッドに寝かされているのだ。

どこか中華を思わせる部屋の雰囲気に、ここは自分のいた国とはまた違うのかとワタルはまた頭を悩ませる。


「ああんもうっ、そないいっぺんに聞かれるとわての口が追いつきまへん。
ゆっくり、まったり、な?」


あやすようにワタルの頭を撫でる療杏に、「はい…」と返事をしてワタルは一先ず水を喉に流した。

正直、病に魘(うな)されていたとはいえ、飲まず食わずでは辛かったのだ。
療杏も、後でお粥も持ってきてくれるという。

感謝の言を伝え、ワタルはその身を起き上がらせた。



「ほいで、どっから説明しましょか。色々ありましたもんなあ」

「はあ…」


これといった返事もないため、覇気のない言葉を返すと療杏(りゃおあん)はにっこりと微笑んだ。


「ほんならまず、なんでここに連れてこられたんか。そっからやんね」


いつの間にか療杏の頭に乗っていた学者帽は、気にしないでおこう。
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