「とにかく、メシの途中だ。ちょっと冷めてしまったけど食おう。これからのことは、メシが済んでからじっくり、な」

 蒼介はカレーに置いていたスプーンを手に取り、ニッコリと満面の笑みを見せる。

「お互いの過去を知らなかった分、これからふたりで新たな歴史を作っていけばいいよ」

 臭いことを言うなあ、と思いながらも、美雨はあえて黙っていた。

 蒼介は再び、意気揚々とスプーンを動かす。
 冷めたカレーも本当に美味しそうに口に運んでゆく姿に、やっぱり自分は幸せ者なんだ、と改めて思った。
 ついさっきまではうじうじしていたくせに、ずいぶん現金なものだと呆れる。

 美雨も食事を再開した。
 冷たくなったカレーは味が落ちているはずなのに、蒼介の姿を見ていたら、いつにも増して美味しく感じられた。

 そういえば、冷蔵庫ではケーキも待機している。
 ケーキは別腹だけど、食べ過ぎないように気を付けないといけない。

「ケーキのために余裕を持たせておいてね?」

 大丈夫だろうとは思いつつ、念のために蒼介に告げる。

 予想はしていたが、蒼介は、「はいはい」と流し、早速おかわりを要求してきた。

「美雨のカレーを存分に食わないとケーキは食えない」

 そんなことまで言う。
 もちろん、最高に嬉しいことだ。

「それじゃ、さっきよりも愛情詰めてくるから」

 そう言って、空になったお皿を手に取った。

「さっきよりも多めにな」

 ニヤリと笑う蒼介に、美雨は微苦笑で返した。

 当たり前のようで当たり前でない日常。
 こんな日々はどこまで続くのだろう。
 美雨は考えながら、要望通り、蒼介のお皿にたっぷりとカレーを盛り付けた。
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