「一緒に入る?」

 蒼介からストレートに訊かれた。

 美雨はもちろん、言っていることをすぐに察したが、わざと「どこに?」と聞き返した。

「わざと焦らしたな?」

 美雨がとぼけたのは完全に見破られていた。
 蒼介はさらに、美雨を抱く腕に力を籠めると、耳元で囁く。

「風呂でこれからのことをじっくり語り合うのも悪くないんじゃない?」

「――拒否したら?」

「今夜の美雨は絶対拒否しない」

 この自信はいったいどこからくるのか。
 美雨は半ば呆れ、しかし、蒼介の言う通り、拒絶するつもりは全くなかった。

「一緒に入れば満足?」

「ひとまずはね」

「他に望みでも?」

「そんなの言うまでもないだろ?」

 一緒に入ると言われた時点で勘付いたが、入浴は前戯と同様ということか。
 だが、蒼介に限って浴室内で無茶なことはしないだろう。

「一緒に入るだけだからね?」

 大丈夫だとは思いつつ、しっかり釘を刺しておく。

 蒼介は微苦笑を浮かべ、「大丈夫だよ」と言葉を紡いだ。

「俺もそこまで無節操じゃないつもりだ。風呂場で本番なんて、美雨が一番イヤだろ?」

 ずいぶんと明け透けな言い回しだ。
 だが、蒼介なりに気遣ってくれているのは美雨もちゃんと理解していた。

「やったら許さないわよ?」

 信用していないわけではないものの、ついついそう強調してしまう。

 案の定、蒼介はそんな美雨に困ったように微苦笑しながら肩を竦めて見せた。
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