◆◇◆◇

 あれから五年の歳月が流れた。

 外は朝から雨が降り続いていた。
 天気予報でも今日は夜まで雨だと告げていたから、今日いっぱいはやむことはないだろう。

「あーあ、こんな日に雨なんて……。今日ぐらい晴れてもいいのにねえ……」

 美雨の隣で、妹の雪乃(ゆきの)がうんざりしたようにぼやいている。

「雪乃は雨が嫌いだっけ?」

 雪乃に美雨が問いかけると、雪乃は「当たり前でしょう」とあからさまに呆れていた。

「だいたい、雨はいいことなんてひとっつもないじゃん!
 まず、音が煩いでしょ。臭いも嫌だし、食べ物にはすーぐカビが生えちゃうし……」

 雨嫌いの条件を指折り数えながら答える雪乃に、美雨は思わず苦笑いしてしまう。

 雪乃の言っていることはもっともだ。
 特に六月の雨は、何かと鬱陶しささえ感じてしまうものだ。

 けれども、美雨は雨を嫌いだとは思っていない。
 むしろ、今は雨に感謝しているほどである。

(そう、あの日がなければ……)

 美雨が想いを馳せていた時であった。

「美雨」

 心地良い低い声が、美雨の耳に響いてきた。

 美雨はハッと顔を上げる。

 そこにいたのは、今まさに美雨が想っていた相手。
 あの雨の日に出逢った青年――蒼介(そうすけ)である。

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