「調べたの?」

 蒼介の問いに、美雨は再び頷く。

「でも、検査薬を使っただけだから……。生理もないし、いつもより怠いから、何となく気になってて……。でも、今日になって思いきって買って使ってみたら……、反応が……」

「そうか……」

 蒼介は目尻を下げながら、美雨の手に自分のそれをそっと重ね合わせた。

 美雨は驚いたように目を見開き、蒼介をジッと見つめた。

「嫌じゃ、ないの……?」

 おずおずと訊ねてくる美雨に、蒼介は「そんなわけないだろ」と微苦笑しながら答える。

「嫌どころか嬉しいよ。そっか、俺もとうとう親父になるんだな。美雨はママか」

「やだ、蒼介」

 蒼介の言葉に安堵したのか、美雨はようやく笑顔を取り戻した。

「私が〈ママ〉なら蒼介は〈パパ〉でしょ? それか、蒼介が〈親父〉だったら私は〈おふくろ〉」

「俺は〈パパ〉ってガラじゃないだろ? それと、美雨に〈おふくろ〉なんて似合わないよ」

「そんなことないわよ。それとも、『パパ』って呼ばれるのは照れ臭いの?」

 図星を指され、蒼介はグッと言葉を詰まらせた。

 答えに窮している蒼介を、美雨はさもおかしそうに眺め、口元を押さえながらクスクスと笑っている。

「そこで笑うか……」

 眉根を寄せる蒼介に、美雨は、「ごめん」と謝罪しつつ、それでも笑うのをやめなかった。

「でも、『パパ、ママ』って呼ばれるのはちっちゃいうちだけよ?」

「そりゃそうだろうな」

 そう答えたのとほぼ同時に、信号が青に変わった。
 蒼介は再びアクセルに足をかけ、加速させてゆく。

「とにかく、今日は前祝いだな」

 口にしてからチラッと美雨を見ると、美雨は眩しそうに蒼介に視線を向けていた。
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