不意に、美雨が俯いて肩を揺らした。
 怪訝に思い、人参をかみ砕きながら覗っていたら、声を押し殺して笑っていることに気付いた。

「なに笑ってるんだ……?」

「だ、だって……」

 美雨はなおもクスクスと笑い続けていたが、何度か深呼吸を繰り返し、ようやく笑うのをやめた。

「蒼介ってばあんまり真剣に悩んじゃうんだもの。大丈夫よ、本気で憶えたいなら私が責任持って教えるから」

「美雨が料理の先生になってくれるの?」

「ええ」

 美雨は頷き、「ただし」と付け加えた。

「私、これでも結構スパルタだからね? 教え込む時は徹底的に教え込みます」

「――怖いな」

「それぐらい、当然じゃない?」

 満面の笑みで言われ、蒼介は返す言葉が見付からなかった。

「――出来るだけ、お手柔らかに……」

 そう告げるのが精いっぱいだった。
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結婚  夫婦  運命  切ない  しっとり  シリアス  出会い 

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