私は異世界の魔法使い?!
・ソーサラー
◆ ◆ ◆
「だぁ! やっと着いた!」
距離は決して近くはなかった。
青空マーケットを抜けてそこから約10キロは歩いたのではないだろうか。
普段の運動不足がこんなところで発揮されるとは……。
私は肩で息を整えながら、目の前でそびえ立つ闇のように黒い宮殿を見上げる。
明るい景色の中で、それはまるで影のよう。
遠くからでもあんなにはっきり見えていた宮殿は実際そばに来てみるとそれほど大きくはなく、いや、大きいのは大きいが想像していたよりも小ぶりに見えた。
それでも宮殿を取り囲む城壁の端は、ここからでは見えない。
「ねぇ、着いたのはいいけど、どこから入ればいいの?」
辺りを窺うが入り口らしきものが見えない。
入り口の反対側に来ちゃったのかな?
そう思った瞬間、盛大な溜め息が心の中で漏れた。
この城壁を見ればぐるりと迂回して入り口を目指すのはなかなか骨が折れるだろう事が容易に想像ついたからだ。