私は異世界の魔法使い?!
・最後の扉
ぐらり、ゆらり。
体が、心が、脳が……揺れる。
心地よい揺れ、心地よい温度。
いつまでもこうしていたい、いつまでもこのままでいたい。
さっきまでとは一転し、視界に広がる真っ白な景色はいつしか闇一色。
目も見えているのか見えないのかわからないけれど、そんな事すらどうでも良いように思える。
ただ、この心地よさを静かに感じていたいーー。
心も体もそれを欲してる。
けれど、そうしてはいけないって事を私は知っている。
前にここへ来た時はワンドと一緒だった。
ううん違う、今も一緒にいる。
もう声は聞こえないけれど、ワンドはきっと私を見てる。
だから彼ならきっとこう言うんだ。
ーー見失ってはいけない。
そう、私は見失ってはいけない。
ここにいる理由と自分の役目。
ただ戸惑ってばかりで、誰かに助けてもらってばかりだったあの時の私じゃない。
何も見えなくたって、暗い闇の中でだって、たったひとりきりだって……怖くない。
だってここはカイトの中。
何も怖がる事はないんだ。