恋の糸がほどける前に

確かに美味しそう、とは言ったけど、食べたい、なんてひと言も言っていないのに。

私、そんなに分かりやすく物欲しそうな顔をしていただろうか。

……それとも。


水原だから、分かってくれたの……?



「……ありがと」


「おー」


……どうやら水原は、私の心を離してはくれないみたい。

簡単に揺らぐようになってしまった私の心。

恋って怖いんだって、思った。

怖いくらい、世界が変わるから。

今はまだ、両想いになりたいとか、報われたいとか思っているわけじゃなくて。

恋愛初心者の私には、この胸の高鳴りに耐えるだけで精一杯で、先のことなんて考えられないけど。


……でも、もし。

もし、これ以上を望んでしまうようになったら。

水原の気持ちが欲しいと思うようになってしまったら、私はどうなってしまうんだろう。


これからどんどん好きの気持ちが大きくなっていったら。


────私、自分の気持ちを抑えられる自信がないよ。


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